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終焉のコドク

自作小説です。 残酷な描写もしますので苦手な方はスルーするのをお勧めします。

第39話 限界電圧

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第39話 限界電圧

 東雲隊員は焦ってしまった、狙撃しようとした瞬間に壁が崩れて、外に居た不死者の集団が雪崩れ込んでしまったのだ。
その後は煙に紛れて見えなくなってしまい中の様子が伺えない、断続的な射撃音や爆発音でかなりマズイ事になっているらしいのは判る程度だ。
 無線を通じて隊長に指示を仰ぐにも、不死者の迎撃に忙しいらしく断片的にしか通じない。
 無線を聞いていた限りでは、銃弾が通じない不死者が居るという。
それだけでも驚愕だが、仲間が次々とやられて人数が半減してしまったらしい。
助けに行きたいが中の状況が判らないので動けない、ヘタに行動すると同士討ちしてしまう可能性がある。
 それにここには東雲と栗橋友康しかいない。
 とりあえず老人ホームを狙撃出来る場所にに張り付いたままだ。
 そして老人ホームの周りにも、付近の不死者たちが続々と詰めかけている。
まるで近隣の不死者たちが集結しているみたいだ。
 あれだけ爆破とか騒げば仕方が無いのだろう。
 東雲は老人ホーム内にいる片山隊長と、善後策を話し合っているが、中々結論が出ないでいる。
そして、集結している不死者たちの数が、ざっと見て300体以上いるみたいだ。
 友康が観察していると、並みの不死者と走る不死者の違いが判るようになった。
並みの不死者はトボトボと歩く感じだが、走る不死者は違った印象がある。
サササっという感じで走り、一旦止まって付近の様子を伺ってから、また移動するのを繰り返している。
 注目する点は、時々並みの不死者を捕食する個体がいる事だ。
そういう違った点を考えると、並み・走る・強化の3者の違いが掴めそうだ。
全体の3割ぐらいが走るもしくは強化不死者が居るらしい。
 しかし捕食しない走る奴も居るので、強化タイプの走る不死者は捕食する奴ではないだろうかと考えた。
 東雲が無線連絡がひと段落付いたらしいので、友康は自分の推察を言ってみた。
「ちょっと、試しに狙撃してみましょうか」
 東雲は走る不死者らしい者を指差しながら言った。
「まだら模様のシャツを着てる奴を狙ってください、まだ捕食してない奴なので只の走る不死者だと思います」
 東雲は了解したという感じで頷き、小銃を構えて引き金を引いた。
”バスッ” とくぐもった音が聞こえ、まだら模様の不死者は頭を吹き飛ばされた。
「次はピンク色のシャツを着た不死者をお願いします、さっき並の不死者を捕食してたので強化タイプだと思います」
 東雲は頷き小銃の照準を合わせて引き金を引く。
”バスッ” という音の後に ”キンッ!”という音がして、狙われた不死者は少しよろめいた。
「キシャアアアア!」
 まるで怒っているかのように、辺りに向かって咆哮している。
「……やはり、捕食するのが強化タイプですね……なんか、怒ってるみたい」
 友康は首をすくめながら、狙撃されて怒っている不死者を見つめた。
「消音されているので狙撃ポイントは連中には判らないと思うよ」
 東雲はそう言うと、友康の推測と今の実験結果を片山隊長に無線で報告した。
「さて次はどうしようか?」
 走る奴には漂白剤が効かないし、ましてや強化タイプには銃弾すら効かないと来てる。
 東雲の自動小銃と拳銃、友康の水鉄砲とラバーカップが今ある武器だ。
老人ホームに集結しつつある不死者たち相手では、圧倒的に火力が不足している。
ましてや割合から見ても強化タイプが60体は居る可能性が有るのだ。
 東雲と友康は考え込んでしまった。
 無線でトラックを調達するように指示されたが、友康の漂白剤ですら不足し始めている。
 このままでは、トラックを調達してきても突入出来ないではないか。
 そこで友康は手短な所から必要な材料を調達することにした。
「そうだ、来る途中にパチンコ屋がありましたよね?」
 友康は思い出したように、パチンコ屋に行こうと言った、東雲はちょっとだけ怪訝な顔をした。
「パチンコ玉をばらまくんですよ。 奴ら足下を気にしないからコロコロ転がりますよ」
 宮前橋での出来事を語る友康、走る不死者を始めて見たのもあの橋だった事を思い出した。
「その隙をついてトラックを横付けして、隊長たちを収容するんですよ」
 身振り手振りで説明する友康。
「あはは。 良いな、それ」
 愉快そうに笑った東雲は片山隊長に、友康の提案を報告し承諾を求めた。
『何と言うか……栗橋さんらしい作戦ですね』
 無線の向こうで苦笑しているみたいだが作戦は承諾された。
 友康と東雲は一旦老人ホームを離れて、来る途中に有ったパチンコ屋に向かった。
その店は郊外型と呼ばれる大形店だ、駐車場も広く店構えも巨大だ。
普通なら駐車場に不死者がうろついていそうなものだが、老人ホームの騒ぎで呼び寄せられたのか、一体も居なかった。
 パチンコ屋に到着した友康と東雲は、中に入る為に店の裏側に回った。
友康がドアを開けようとすると、施錠されているらしく開かない。
東雲は躊躇すること無く、銃で鍵の周りを破壊した。
あまり時間を掛けたくなかったのだろう。
 店の中に入ると東雲は、パチンコ台の一つをこじ開けた。
遊技台の中にある球を取り出すためだ。その玉をドル箱と呼ばれているプラスチックのケースに貯め込んでいく。
ケースは運びやすいように台車に積み上げて行った。
 その頃、友康は景品カウンターに向かっていた。
お菓子等が有るのはもちろんの事、こういう店には主婦向けに洗剤などを置いてある。
当然、漂白剤もある。それを調達しようと友康は考えたのだ。
 景品カウンターに着くと、探すまでも無く目的の物が目の前にあった。
「……そうだよなぁ~やっぱり、洗濯どころじゃないもんなあ」
 それを手に取ろうと一歩踏み出した時に足に何か当たった。
「ん?」
 足元を見ると思いも寄らない物が散らばっていた。

使い捨てカメラだ。

 それを見た瞬間に閃いた。
「あっ、アレが作れる!」
 友康は使い捨てカメラのバッテリーを応用したスタンガンを製作しようと思い立った。
 まだ高校生だった時に、見た目そのままに弱っちい友康は、良くカツアゲに逢っていたのだ。
そんな時にネットで簡易スタンガンの制作方法を見て、試しに自作してみたことがある。
 もっとも使う前に引きこもってしまったのだが……作る手順ならまだ覚えているので大丈夫だ。
 まず中身をバラしてコンデンサーを取り出して、回路を繋ぎ変えてリード線を延ばしておく。
それを釘2本に繋ぎ、それを相手に接地させる事で通電させる。
 何か棒のような物を探したが、あいにくと無かったので、ラバーカップの取っ手の棒にガムテープでくっ付けた。
 出来上がりを見る為にスイッチを入れ、コンデンサーに蓄電させてみた。
”キュィーーーン” と蓄電される音が鳴り、準備が整ったLEDが点灯した。
 1つだけだと五百ボルト程度にしか成らないが、10個直列にすれば五千ボルトにもなる。
5千ボルトもあれば強化不死者の筋肉をマヒさせる事が出来るだろう。
 大人しくさせる事が出来れば東雲も照準しやすいと考えた。
「……これなら強化不死者もイチコロだぜ」
 友康は出来上がりに満足してニンマリとした。
 実施テストは東雲に手伝って貰う事にして、漂白剤や水・菓子などをリュックに詰め込んでいた。

 東雲はある程度に玉が貯まったので、車の調達に駐車場に来ていた。
片山隊長はトラックと言っていたが適当な車両が無い。
 見るとワンボックスカーが有った、ファミリー向けの大きい奴だ。
これならサンルーフが開くので何かと便利そうだが、運転席に女の不死者が蠢いていた。
シートベルトが邪魔で襲い掛かって来られないらしい。
「車……貰うね?」
 東雲はそう言うと不死者の口の中に着剣した小銃を突き立てた。
動かなくなった不死者を車から放り出して乗り込んでみた。
 鍵もあるしガソリンも半分くらいあるらしい。
「さ、荷物を積んでみんなを迎えに行くか」
東雲は友康の待つパチンコ店に車を走らせた。

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