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終焉のコドク

自作小説です。 残酷な描写もしますので苦手な方はスルーするのをお勧めします。

第40話 一点突破

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第40話 一点突破

 栗橋友康はパチンコ屋の通用口に居た、東雲と共に描き集めた資材を車に運び込みながら、簡単な打ち合わせを行った。
「まず、入口の連中に溜まっている不死者たちを、老人ホームの駐車場に誘導しましょう」
 東雲がパチンコ玉の入ったケースを車に積みながら説明を続ける。
「僕は車でアラームを鳴らしていればいいんですね?」
 栗橋友康は景品カウンターで見つけたキッチンタイマーの電源を確かめながら尋ねる。
「そう、その後引き返す途中でパチンコ玉をばらまくんですよ、これでかなり時間が稼げると思います」
 東雲はそう言うと車のバックドアを閉めた。

 老人ホームの駐車場にいざ侵入してみると、並の不死者の群れが車のエンジン音に気が付いたらしい。
「うがああああ!」
 不死者たちが此方に向かって、吠えながらゾロゾロと歩き始めた。
 東雲は余り距離が離れないようにノロノロと車を動かす。
友康は車のサンルーフから上半身を出して水鉄砲を構えたまま大声を出している。
「こっちだぁ!」
 するとひょこひょこと動く不死者が居た、歩く奴に邪魔をされて思うように動けない走る不死者だ。
「走る奴が来る!」
 サンルーフから車内の東雲に向かって言った。
「よし! キッチンタイマーを鳴らすんだ」
 東雲はそう叫びながらアクセルを踏み込んだ。
 友康はキッチンタイマーのスイッチをONにして手をかざした。
”ピピピピピッ” 駐車場に響き渡る電子音。
「キシャァァァァッ!」
 走る不死者はキッチンタイマーに反応して、此方に向かって走って来る。
車は駐車場を老人ホームの建屋のある反対側に向かって走って行った。
 そして、十二分に引き付けると反対側に向かって走り出した。
友康が車内に積んであったパチンコ玉をばらまき始めると、ズルッズルッという感じで不死者たちが転がっている。
「上手くいってます、今の内にみんなを助けましょう!」
 友康が東雲に嬉しそうに告げた。
「よっしゃ! このままホールに突っ込むぞ!」
 東雲は車をホール内に侵入させて爆破した後に車を横付けした。
こうするとサンルーフから老人や女の子たちを車内に入れやすくする為だ。
 車にホールに居た不死者が集まって来た。
「車が囲まれると不味いので牽制してきます!」
 友康はパチンコ玉をポケットに詰め込んで、水鉄砲を抱えて車外に出た。
まず目の前にいた不死者たちに次々と浴びせて、車から遠ざけていく。
皆が2階から車に乗り移る間、友康は車から離れて水鉄砲で不死者を追い払っていた。
 車の進入音に気が付いた不死者たちが続々と老人ホームの中ら現れて来ていた。
 前原達也たちが小銃を使って不死者たちを銃撃している。
「キシャァァァァッ!」
 しかし、水鉄砲が効かない個体がいる、走る不死者をどうにかしないと不味い。
 そこで友康は老人ホームに備え付けの消火栓を解放して、その水圧で走る不死者たち凪払った。
何体かは水圧でホームの外に飛んで行った。
 しかし、最初は勢い良く水が出たが、直ぐに勢いが無くなる、屋上にあった水タンクの分しか無かったであろう。
さっき弾き飛ばした走る不死者がホールに戻って来てしまった。
「キシャァァァァッ!」
 友康は直感でコイツは強化タイプだと思った。
口の形が違って見えたからだ。
 その強化タイプは直ぐに体制を立て直して、友康に襲いかかって来る。
「引きつけるから、みんなの収容を急いで! それから僕を助けて!」
 友康は達也にそう叫んでから廊下側に走って逃げた、これまでの経験から自分は走る不死者に狙われているらしいからだ。
 そして、廊下の物陰に潜んでラバーカップスタンガンの電源を入れた。
走る不死者は見失った友康を探すかのように廊下をズリズリと歩いてくる。
 物陰から躍り出た友康は、やり投げの要領でラバーカップを投げつけた。
旨い事当たれば勝手に放電してくれる、何しろ市販のスタンガンのように安全装置などないのだ。
 だが、悲しい事に強化不死者の手前でラバーカップは失速してしまい、カタンと音を立てて転がってしまった。
「ありゃ?」
「ィギャッハハハハ!」
 音に反応して振り向いた強化不死者は友康に咆哮してきた。
ラバーカップで攻撃された事より、友康を見つけた事で吠えているらしい。
「のわわわわ、失敗したぁぁぁ!」
 友康はそう叫んで傍のロッカールームに逃げ込んだ。
だが、勢いを付け過ぎてしまい、つまずいてロッカーにぶち当たってしまった。
 そして、ロッカーの中身が雪崩のように友康に襲い掛かって来る。
「お、女の子のロッカーって、なんでこんなにも荷物が入ってるんだあ!」
 友康は慌てて机の下に潜り込む、不死者は多分にしゃがんで探すことが苦手と踏んでいたのだ。
 強化不死者は部屋の中に侵入してきて、友康を探すかのように歩き回っている。
友康は見つからないように、机の端から端へと下から見えている不死者の反対側にいるように動き回っていた。
 だが、床に目を向けると女性用のストッキングが落ちているのに気が付いた。
”あ、これが有ればアレが作れる!”
 足の部分に重石を入れたストッキング2足を組み合わせれば、簡易ボーラが作れる事を思い出したのだ。
「確か、3か所で良かったよな……」
 足の部分にパチンコ玉を一掴み40個ぐらいづつ詰め込んで、そのままばらけてしまわないように足首で縛る。
それを3本分作り股のあたりで結んでしまえばいいだけだ。
 元々、ボーラ(BOLA)は複数のロープの先端に球状の錘(おもり)を取り付けた狩猟用の道具の事だ。
 まだ、銃などが発達していない頃に、鹿狩りなどに使われていた。
 投擲されたボーラは錘の重量と遠心力で、広がった状態で回転しながら飛び、獲物の脚に絡み付き行動を妨げ、動けなくなった所を捕獲する。
 頭や胴に命中した場合も、錘の重量と回転が十分な打撃力となり、頭に当てられた場合は卒倒してしまう。
 また、投擲武器としてではなく、ロープを持ったまま錘を回転させて相手に叩き付ける打撃武器としても使われることもある。
 女性のストッキングと適当な錘になるものを組み合わせて、即席で作られたボーラが暴漢撃退用として使える事を教えている、防犯教室もあるぐらいだ。
 これを投げつけるとボーラが脚に絡みついて外れなくなり、不死者を始末付けやすくなると友康は考えたのだ。
 ボーラの中心を持ち、頭上で振り回して十分に加速が付いたところでボーラを放して、強化不死者に投げ付け絡まった所をスタンガンで殺る。
 友康はそう作戦を考えて室内を歩きまわる強化不死者の隙を窺っていた。
 そして、強化不死者が廊下の反対側に回り込んだタイミングで廊下に走り出た。
 途中で床に落ちたラバーカップも回収して、達也たちが居るホールまで必死に走る。
 友康が廊下を走る音に気がついた強化不死者も、続いてロッカールームから出て来た。
「ィギャッハハハハ!」
 強化不死者は友康を再び見つけた悦びで咆哮しながら追いかけて来る。
 友康は途中でボーラを回し始めた、すぐに投擲できるようにするためだ。
 強化不死者は吠え声を出しながら友康を追いかけてくる。
 ホールに着いた友康は、振り向きざまにボーラを不死者に向かって投擲した。
投げ出されたボーラは遠心力で、直径1メートルぐらいに広がり、床の上をくるくると回りながら、強化不死者に向かっていく。
 強化不死者の足もとに重りの一つが触れると、それを中心にして他の重りが回転する。
 やがて強化不死者の足に全て絡み付いて行った。
 走る事をジャマされた強化不死者はそのままハデな音を立てて転倒してしまった。
「うおおおぉぉぉ!」
 友康はラバーカップを抱えて強化不死者に突進していく。
友康はえいっと気合いを入れて強化不死者の首付近にスタンガンを突き立てた。
”ビィーーーン!” と空気が震えたかと思うと、コンデンサーから電気が放電され、辺りにはちょっと焦げくさいイオンの匂いがしてくる。
 強化不死者はビクンビクンと麻痺していて、身体が硬直しているのが解った。
 筋肉が麻痺して走る事が出来ない、強化不死者は追いかけて来られない。
”ギョワッ ギョワッ” と、強化不死者は不愉快なほえ声を発しながらヒクついている。
「い、今の内に!」
 友康はラバーカップを突き立てたまま、後を追いかけて来た達也に止めをさせと言った。
達也は小銃を構えて強化不死者の眼孔に照準を合わせた。
 だが、片山隊長が止めた。
「まて! 首を持って帰ろう……こいつらの弱点が判らんと今後の対策が取る事が出来ない」
 その言葉に達也は頷き、小銃を斧に持ち替えた。
「了解!」
 達也が斧に渾身の力を込めて強化不死者の首に向かって振り下ろした。
”ガギンッ!” 斧が首半分の所で止まっている。
「そのままにしてて!」
 小山が自分の斧を裏返しにしてハンマー代わりに叩きつけた。
”ガキン!”
 鈍い音と共に強化不死者の頭が胴体から切り離され、床にゴロリと転がり落ちた。
そして、その目は友康を睨みつけている。
”また、お前か!” とでも言いたげだった。
 胴体から切り離しても、強化不死者は動くことを止めないで口を動かしている。
まだ、脳を破壊していないせいだ。
そこで、タオルを口に巻き付けて噛みつけないようにして、洗濯ネットに入れバックの中にしまい込んだ。
 その首を松畑隆二への手土産にする為だ。
このやっかいな新種の事を調べて貰わないといけない。
「よし! みんな良くやった さあ引き揚げようか」
 片山隊長は友康に微笑んだ。友康は褒めらた事より、皆の役に立った事が嬉しかった。
こうして救出チームは、隊員を半減させるなどの多大な犠牲を払って帰路に就いた。

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