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終焉のコドク

自作小説です。 残酷な描写もしますので苦手な方はスルーするのをお勧めします。

第38話 Shall We Dance?

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第38話 Shall We Dance?

 強化された不死者は、力もまた強かった。
「うがああああ!」
 雑多に積み上げただけのバリケードは、瞬く間に崩されて彼らは乗り込んで来た。
そして、バリケードを抑えつけていた出川隊員の左手に噛みついてきた。
「くそったれがぁぁ」
 小銃は間に合わないと思ったのか、出川は右手で拳銃を取り出し、自分の左手の隙間から不死者の口に筒先をねじ込んで引き金を引いた。
”ぱんっ! ぱんっ!”と立て続けに鉛玉を打ち込むが、それでも不死者は噛みついた口を離さない。
 傍にいた田中隊員が駆け付けて、斧で不死者の首を撥ねようとした瞬間、横合いから飛び出て来た違う不死者に、首を噛み千切られてしまった。
「たなかぁぁぁ、うあぁぁぁぁーーー」
 出川は不死者の口に突っ込んだ拳銃を、今度はその眼孔に押し当てて引き金を引く。
”パンッ!” 今度はあっさりと不死者は事切れた。
「目だ! 目を狙えば脳みそを破壊できるぞ!」
 出川は叫んで小銃を構え直して、田中隊員の首を噛み千切った不死者に射撃を開始した。
その不死者は出川に立ち向かおうとしたが、何発目かの銃弾で眼孔から入った銃弾で頭を吹き飛ばされた。
「やったぜ!」
 ガッツポーズを取ろうとした出川は、自分の左手が手首から先が無くなってるのに気が付いた。
「あああ、手がねぇぇぇ!」
 大里隊員が出川の負傷に気が付き手当をしようと歩きかけた時、バリケードの机の向こう側に引き込まれてしまった。
「うあぁぁぁぁーーー!」
 大里が悲鳴をあげ自分持つ小銃の引き金を引いてしまった。
”ドドドドドン!”
 狙いを定めない銃口は味方を誤射してしまい、佐藤隊員・三池隊員・女の子たちがなぎ倒される。
 バリケードの向こう側からしばらくは悲鳴が聞こえていたが、それも直ぐに静かになってしまった。
「うがああああ!」
 その間にも不死者たちはバリケードを越えて入り込んでくる。
 車いすに載った老人に不死者が取り付いた、老人は手に持った箸を不死者に突き立てて抵抗していたが、やがてがっくりと首を落とした。
 出川は自分の手にタオルを捲いて止血しつつ、小銃を構えなおし射撃を再開した。
 前原達也は出川の忠告を聞き、不死者の眼孔を捉えるべく射線を巡らすが中々命中しない。
”バスッ! バスッ!” 何発目かの射撃で強化された不死者が、口や鼻・目から不気味な体液を撒き散らしながら倒れた。
 前原達也の放った銃弾が、不死者の眼孔をとらえる事が出来たのだ。
「10発撃ってやっとかよ……」
効率の悪さに達也はぼやきながら、女の子たちが立ち上がるのを手助けしている。
 どんどん増える死亡者や負傷者に、片山隊長は体制を立て直す為に決断した。
「全員2階に避難する、佐藤! 階段の爆破を用意をしろ!」
 片山隊長はお年寄りを背中に背負込んで、女の子たちを2階へと誘導しながら佐藤隊員に爆破の準備を命じた。
達也もそれに習い、一人を背負い込んで両腕に年寄を抱えて2階へと上がって行った。
 佐藤は負傷した足を庇いながら爆薬を階段に仕掛けていく、小山隊員はその脇でミニミで弾幕を張りながら牽制している。
「うがああああ!」
 だが、強化された不死者はミニミの銃弾ですら跳ね返してしまう。
それでも銃弾が当たる事による衝撃で、前に進めず転倒したりしている。
 達也は2階の手すりから向こう側に、小銃を突き出し出鱈目に弾丸をばら撒きつつ、仲間が逃げて来るのを助けている。
 1階に目を移すと、逃げ遅れた女の子が不死者に襲われ掛けていた。
 しかし、女の子は恐怖に竦んで動けないで、ペタンと床に座って居る。
「お、お前の相手は俺だあぁぁーー!」
 出川はそう叫んで、女の子に近づこうする不死者に向かって、叫びながら椅子を投げつけた。
「キシャァァァァッ!」
 椅子を投げつけられた不死者は、出川を目指して走って来た。
「さあ、かかって来やがれ!」
 出川は出血のし過ぎで霞む目で、拳銃を手に持ち不死者に向けて撃っている。
”パンッ! パンッ! カチッ” 手に持った拳銃の弾が尽きると、それを投げ捨てて胸から手榴弾を外した。
「……出川ー! 辞めろーー!」
 出川は階段の上で叫んでいる片山隊長に一瞬だけ目を向け、自分の口で手榴弾の安全ピンを抜き安全レバーを弾いた。
「Shall We Dance?(さあ、一緒に踊ろうぜ)」
 出川はそう呟いて近づいて来た不死者に飛びつき、抱きかかえたまま倒れ込んだ。
 そして、倒れこんだ所に他の不死者も群がって行った。
 その刹那 ”ドーーン!” という爆音と供に様々な肉片が飛び散った。


「くそっ! くそっ! くそーーっ!」
 片山隊長が爆炎を避けようともせずに、手すりを拳で叩きながら吠えている。
自分の部下が目の前で自決したのだ、平静でいられるはずも無い。
「爆破します!」
 佐藤隊員は階段に何体かの不死者が登り始めたので、躊躇することなく爆破した。
”ズン!” 屋内に鈍い音が響く。
階段の構造だけを破壊するように、仕掛けた爆薬は機能を果たし何体化の不死者を巻き込みながら崩れていった。
「キシャァァァァッ!」
 取り残された不死者が吠えているのが聞こえる。
 これで彼らは2階に上がってこられないが、救出チームも下に降りられなくなってしまった。
 少しの間をおいて落ち着きを取り戻したのか、片山隊長は人数の確認をしてみた。
隊員が自分を含めて5人、老人が4人、女の子が5人だ。
 救出チームはわずかな間に半減してしまった。
「人数が少ない……少なくとも17名のはずなんですが」
 老人ホーム側の数を数えると9名しかいない。
「女性の一人は救出が間に合わず、喰われてしまいました」
 小山が狙撃しながら答えた。
「老人たちの内、車椅子の4人は救出が間に合わず、喰われてしまいました」
 三池隊員が自分の傷口を手当をしながら答えた。
「1人は地下室に閉じ込められています、残り2人は殺されました」
 女の子の一人が答えた。
「空から落ちて来た自衛隊員はどうなりましたか?」
 片山隊長が訪ねた。
「……死んでいると思います、地下の発電機室に連れ行かれたのは知ってますが、傷の手当をさせてくれなかったので……」
 先ほどの女の子が答えた。
「ここは他に階段はありますか?」
 片山隊長は2階に上がって来られる心配をしていた。
「向こう側に非常階段があります、反対側にもう一つ階段がありますが、防火シャッターが降りているはずです……」
 先ほどとは違うここの職員だという女の子が答えた。
「小山、確認して来るんだ」
 片山隊長が残った隊員に指示を出した、悲しんでいる暇は無い、残った避難民を脱出させなければならないからだ。
「そうですか……全員残弾のチェックを行え、外の東雲と連絡を取るんだ、ここに来る途中にあった引っ越し屋のトラックを使おう」
 片山隊長は捜索活動を断念して、トラックを使って脱出する事にした。
 銃弾の効かない強化不死者相手に現有の装備では歯が立たないと判断したのだ。

「……どんどん、強くなる……何故だ?」
達也は不死者相手の闘いに何度目かのため息を付いた。

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