自作小説です。 残酷な描写もしますので苦手な方はスルーするのをお勧めします。
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ただいまコメントを受けつけておりません。
府前基地滑走路
「! 友康!!」
狙撃銃で強化型と思わしき不死者たちを次々と撃っていた東雲隊員は思わず叫んだ。
「! 友康!!」
基地へ向かう途中の前原達也も叫んだ。
”ィヴォッハハハハ!” ”ィギャッハハハハ!”
劫火型不死者が吠え、強化型不死者も釣られて吠えた。彼らもまた天敵の栗橋友康を見つけたのだ。
不死者たちが自分を方を見たのを確認した友康は、不死者たちに向かって”お尻ペンペン”をしてみせた。どうやら不死者を自分に引きつける為に挑発しているつもりらしい。そして、丘の反対側に向かって防犯ブザーを鳴らしたまま自転車の乗って走って逃げて行った。
「今の内に脱出だ!」
オスプレイに乗った警護隊長は叫んだ。パイロットはスロットルを全開にしてエンジンの出力を最大にする。いつ不死者たちの気がかわってこちらに向かって来るやも知れないからだ。オスプレイはエンジンの出力を最大にして、ふわりと浮かびあがり府前基地の滑走路を飛び立った。
そんなオスプレイの横を、友康を見つけて興奮した不死者たちがなだれを打って移動し始めた。不死者たちが我先にと駆けつけようとしている。さっきまで執拗に追いかけまわしていたオスプレイの事は忘れたみたいにだ。
「そうか、ここに栗橋さんが載っている勘違いしていたのか」
群がって来る不死者たちは、松畑隆二たち医療チームを狙っていると思っていたがそうでは無かったらしい。
「隊長さん、あの劫火型不死者の肩に乗ってる制御型不死者を狙撃するように伝えてください」
警護隊長の耳元でオスプレイの轟音に負けないように大声を出しながら隆二は指差した。そこには肩に少女のような不死者を載せた劫火型不死者が歩いていた。隊長は判ったというように頷き肩の無線機マイクに何事か怒鳴っている。
「……栗橋さん、人間の面倒事はこっちで片付けますから頑張ってくださいね」
隆二はオスプレイの窓から、丘を自転車で逃げて行く友康を見ながら口の端を歪めていた。
「よし、彼の援護をするぞ。 前進!!」
片山隊長は滑走路に残った隊員たちに声をかけた。東雲隊員を始めとする隊員たちが駆け出した。
友康が丘を降りて逃げている最中に角から飛び出してきた男にぶつかった。ぶつかった衝撃で自転車と共に倒れた友康は、躊躇わずにラバーカップを相手の顔に被せた。友康が不死者相手によくやる方法だ。こうすると噛まれないし、逃げ出す時間が出来るからだ。だが、男の服装を見て手を止める。その男は迷彩服を着て自動小銃を持っていた。”ぬぉ、自衛隊員? 不死者じゃない!? また、やっちまった??”と友康は内心焦ってしまった。
そーっとラバーカップを外すと、中から達也の顔が現れた。達也のこめかみがひくひくと動いている。
「ありゃりゃ、ゴメンですよ……」
ひょっとしたら、達也無いかなと思っていた友康は、顔にラバーカップの丸い跡を付けた達也に謝っていた。
「……ったく、確かめろよ」
達也は倒れて自分の上に乗っている友康と自転車を横にずらしながら言った。”あのラバーカップは一度もトイレ掃除に使ってないはずだよな……”達也は漠然とした、どうでも良い不安をラバーカップを見ながら考えた。
「相手が不死者かどうかを確かめている間に、僕がやられちゃうに決まってるじゃないですか」
友康が緊張から解放されたのか、そんな軽口を言って照れ笑いをしていた。
「そりゃ、そうだ。 まあ、無事で良かったよ、最も誰も友康がやられるなんて思ってなかったけどな」
達也は起き上がり、友康が起き上がる手助けをした。”ちょっとぐらい心配してくださいですよ”と友康がぶぅぶぅ文句言いながら起き上った。丘の方を見ると劫火型不死者の頭が見え隠れしている。取り敢えず避難する為に近くの雑居ビルに入っていった。
「ところで、その背負ってるのは何だ?」
達也は友康が背中に背負っている、見慣れない白い筒を指差して尋ねた。
「ああ、これは対不死者用の新兵器ですよ。 不死者は一定量以上の赤外線を目に照射されると見えなくなるんですよ」
普通の生きている人間ですら、ストロボ光をまともに見ると、しばらくは目が効かなくなる。強い光が残像として目の網膜に残ってしまうためだ。友康は不死者の場合には目の網膜の復原力が無くなっているのだろうと推測していると説明した。
「強力なストロボ光を百ミリセカンドで次々と点燈させています、不死者は目を瞑ることが出来ないので、目を焼き切る事が可能なんです」
網膜の復原力などの詳しい事は隆二に聞いてくれとも言った。
「実験して確かめてあるから確実ですよ。 こいつは強力な赤外線を出して、不死者の目を潰しにかかるですよ。 五分ぐらい様子を観ていたんだけど見えないままだったですよ。 」
友康はニートブラザーライト改を達也に渡しながら使い方を説明しはじめた。
「これって元は望遠鏡か…… それにストロボの発光体を取り付けて…… なあ、コレって茶漉し?」
ニートブラザーライト改の先頭に付いている丸い針金を指さしながら達也が質問した。
「そうですよ、照射範囲を照準出来る円形の奴が欲しかったんですよ」
友康は両手で丸を作って見渡して見せた。確かにどこを狙っているのかが判らないと使い辛いものだ。
「使い方は簡単ですよ、ここの引き金を引くだけですよ」
友康は筒に紐で縛り付けたスイッチを指差した。
「…… 炬燵のスイッチに見えるんだけど」
達也は友康のとんでも新兵器に懐疑的になってしまっていた。
「じゃあ早速、試してみましょうか?」
友康は雑居ビルの隣の路地をドアを少し開けて覗き込んだ。二〇体程の不死者が歩いている。恐らく友康を追いかける為にやってきたのだろう。友康は注意深く観察して強化型が居ない事を確かめた。強化型は他の強化型を呼び込んでしまうので厄介な存在だからだ。
強化型不死者が居ない事に確信を持った友康は、放置されている自動車のボンネットに上がると一声かけた。
「へい!」
友康の声に不死者たちは直ぐに反応した。一斉に友康を見たかと思うとずりずりと歩いて来るのだ。
「うぐああああ!」
彼等には友康の区別は付かないらしいが、人間がそこに居るという事は判るようだ。全員が友康を目掛けて両手を前に出しながら、捕まえようとするかのように歩いて来る。
友康は慌てずにニートブラザーライト改を肩に掲げた。軽対戦車誘導弾を構えてるのに似ている。違いはミサイルでは無く赤外線が出る事だろう。友康は茶漉し照準器を通して群がって来る不死者たちの目に合わせてスイッチを入れた。キュィーーンと充電する音が聞こえ、やがて照射が始まったらしく、群がってくる不死者たちの目のあたりに次々と当てて行った。不死者の目の部分が赤黒く照らしているのが解る。すると目を照射された不死者たちの行動が鈍った。明らかに対象となる人間を見失ったかのように、両手を前に出して探るような態度を示し始めたのだ。
友康は、ほんの一分強程で二〇体余りの不死者を全員無力化する事が出来た。派手な音も動作も無いので拍子抜けしてしまうが、不死者は友康を見つける事が出来ないで足掻いている。友康はドヤ顔で達也を手招きした。
「これはこれは…… むぅ、凄い威力だな……」
照射された不死者は急に立ち止まり、辺りを探るような動作をしだした。達也はわざと不死者たちの前に出て手を振ったり、顔を覗き込んだりした。それでも不死者たちは達也を見つける事が出来ないでいる。
「照射時間は一分間ちょっとぐらい、目を潰したら襲って来る事が出来ないから、ゆっくりと不死者を葬る事が出来るですよ。 耳は潰せて無いので気を付けて下さいですよ」
自慢げにニートブラザーライト改を掲げてニッコリと笑って見せた。達也は頷き腰からピッケルを外して不死者たちを丁寧に葬ってやった。普段だったら噛まれないように気を付けないとイケナイのだが、この方法なら後ろに回って柔らかい首の付け根を一撃で処分できる。今までの苦労が何だったのかと思う程楽に不死者を始末できた。自動小銃の弾薬が節約できるのも有難い。
通りに居た不死者を始末し終えると、達也は小隊無線機で片山隊長に不死者の新たなる弱点の発見と攻撃方法について報告した。片山隊長は返信の替わりに劫火型の特徴に付いて達也に話した。
「もう少し長い時間、照射する事は出来ないのか? デカイ奴はミサイルをかわしちまうらしいんだ」
達也はニートブラザーライト改を見ながら言った。無線で聞いた話では劫火型は動作が素早くて、攻撃方法に難儀しているらしい。
「間に合わせの道具で作ったんで、これぐらいの照射時間しか出来なかったですよ。 そうだ、スタングレネードが有効かも知れないと、片山隊長に伝えて下さいね」
友康は白い筒を撫でながら言った。リレーがもう少しあれば永続的に照射出来ると考えているのだ。そんな事を話していると通りの方から”ずぅん”と何者かが歩いている振動が伝わって来た。劫火型が近づいているのだ。
間に合わせでも、今在る武器で闘うしかない。友康と達也はお互いに顔を見合わせ頷いた。
その時、雑居ビルの屋上から子供の泣き声が聞こえて来た。
*作者より
何故かリンクがこれ以上作れないので、こちらでの公開はここまでです。
続きは「小説家になろう」さんでお読み下さい
既に完結しております。
面白かったのなら評価ポイントが貰えれば、作者のモチベーションも上がりますw
宜しくお願いします。
ただいまコメントを受けつけておりません。