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終焉のコドク

自作小説です。 残酷な描写もしますので苦手な方はスルーするのをお勧めします。

第33話 次点の恐怖

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第33話 次点の恐怖

 気付かれないのが肝心だ……と、でも言うかのように栗橋友康と小山、東雲の3人は研究棟1階の廊下をそろりと進んでいく。
まず、標的となる不死者に友康が漂白剤をかけて、逃げ出そうとする所を小山が斧を頭に打ち込む、東雲は全体の後ろを警戒する。
 しかし、何体目かの不死者に漂白剤をかけた時に、異変は起きてしまった。
これまでの不死者は漂白剤をかけられたら、その場から逃げ出そうとするのに、その不死者は此方に身体を向き直したのだ。
 その不死者はかつては、中年女性だったような服装をしている。
 しかしながら頭は禿げ上がり身体はやせ細っている、服が無ければ見分けがつかない。
「キシャァァァァッ!」
 不死者は顔をブルンと振った後に、両手を横に広げて威嚇するように吠えて来た。
その吠え声は大きく、友康たちがいる廊下のガラス窓が振動したぐらいだ。
「……な、なんか……怒ってるみたいですよ?」
 漂白剤の効かない不死者から目を離さずに友康が言った。
 他の二人も固まってしまった。
初めて遭遇するのだから当然の反応だろう。
「……自分が使っている漂白剤と違うから怒ってるのかな?」
 小山は斧を構えたまま、吠えている不死者を睨みつけている。
「……付け置き洗いしてないから、汚れが落ちないって怒っているとか……」
 東雲は銃のセレクレクターレバーを『連射』に合わせながら、不死者から目を離さない。
3人ともジリッジリッと少しづつ後退している。
 背中を見せるのが怖いのだ。
「ギシャァァァァッ!」
 2度目の咆哮と共に、その不死者の後ろから続々と走る不死者が湧いて出て来た。
「! やべぇ! 走れ!!」
東雲が89式小銃で連射を加えかと思うと、クルリと振り返りながら走り出した。
「うがああああ!」
 他の歩くタイプの不死者も、わらわらという感じでやってくる。
 小山、友康も走り出した。
「あ、あの、ババァの不死者。 やべぇよ!」
”パン! パン!”
 小山は腰の拳銃を抜き出して後ろ振り返りながら射撃していた。
「……ああ、お前んちのお袋さんの次に怖いよ!」
”ダダダダダダッ!”
 東雲が89式小銃で弾幕を張りながら叫んでいる。
「なんで、お前がうちのお袋を知ってんだよ! まあ、確かにうちのお袋の方が怖いかな?」
 小山がニヤッとしながら拳銃の弾倉を交換して、次に背中に背負っている89式小銃を構えた。
「「 あはははは 」」
”ダダダダダダッ!”
 2人は笑いながら走り続け、後ろに居る不死者たちに弾幕を張り続けた。
空薬きょうが廊下に金属製の音を立てながら散らばっていく。
”こ、この人たち……こんな状況でどうして笑っていられるんだ??”
 友康は走りながらあきれ返っていた。
そして振り返らずに、大きい水鉄砲から漂白剤を前に後ろにと、撒き散らしながら走り続ける。
 だが、廊下の端にある階段に差し掛かった時に不死者が現れた。
「うがああああ!」
 友康は身体を低くして躱したが、後ろに気を取られていた東雲はぶつかってしまった。
「ええい! こんちくしょうめ!!」
東雲が89式小銃の台尻で、不死者を殴り付けて倒れた所を銃で撃ち、その頭から脳しょうをあたりにまき散らした。
 ところが、小山が廊下に面している部屋の1室から、不意に出て来た不死者に捕まってしまった。
「うがああああ!」「うわっ!」
腕に巻いたダンボールのおかげで、喉を食いちぎられはしなかったが倒れ込んでしまったのだ。
 それに気が付いた東雲が立ち止まり、友康に向かって怒鳴って来た。
「栗橋さんは先に逃げて下さい!」
 東雲が小山を助けようと駆け戻る。
友康も行こうとしたが、複数の走る不死者が廊下を走っているのが見えた。
 しかし、横を通り過ぎる東雲には目もくれないで、真っ直ぐに友康に向かってくる。
「ギシャァァァァッ!」
”えっ? 俺??”
一瞬、立ち止まってしまう。
 そう、その走る不死者は獲物である東雲も小山も無視して、自分たちの弱点を攻撃する友康に狙いを付けているようだ。
”自分で考えて判断して行動が出来る!?”
 それらは、今までと違った個体だ。
「……不味い!」
 ぞわりとした悪寒が友康の背中を駆け抜けた。
 友康は東雲たちのいる廊下とは反対方向に走り出した。
コイツらが自分を狙っているのなら、小山たちから引き離す事が出来る。
そうすれば小山たちが、生き延びるチャンスが出来ると友康は考えたのだ。
 友康はウェストポーチに入っている、パチンコ玉を廊下にバラまいた。
宮前橋の時には旨くいったが、今回は何体か足を滑らせただけで、主な個体は飛んだり壁伝いに回避されてしまった。
走る不死者がすぐ後ろまで来ている。
 もう直ぐ手が届くかというところで、走る不死者は大声で笑い始めた。
「ィギャッハハハハ!」
 本当は吼えていたかもしれない。
でも、友康には笑っている様に聞こえたのだ。
しかも、それは絶叫に近い感じで、それはもはや人の声では無かった。
「ひぃぃぃぃぃ」
 友康はたまたま扉が開いていた標本室に逃げ込んだ。
扉を閉め鍵を掛けて”ふぅ~っ”と安堵の息を漏らしたが、それはまだ早かった。
”バリーン!” 窓をぶち破って、走る不死者は標本室に飛び込んで来たのだ。
「ギシャァァァァッ!」
 不死者はすぐ横に居た友康に気が付き絶叫してきた。
「ひぃぃぃぃぃ」
 ラバーカップを金属容器にくっつけ、それを足掛かりにして梁に登った。
その梁伝いに逃げる友康。
 だが、走る不死者も梁に飛び乗って追いかけて来た。
 下のフロアーにも友康を追いかける様に、不死者が速度を合わせるかのように移動している。
梁の上は埃が溜まっていて足場が悪いせいか、走る不死者は走って追いかけては来られない。
 しかし、友康は四つん這いになって、移動しているせいで追い付かれてしまった。
「ィギャッハハハハ!」
 走る不死者は咆哮と共に友康にとびかかって来た。
「えい!」
 身体を掴まれる前に捻って躱し、そのまま梁にぶら下がってしまった。
襲い掛かって来た不死者の手は、空を掴んでそのまま下に落ちて行った。
 何か無いかと室内を見回すと金属製の容器が並んでいた。
それはサンプルを保存しておく容器だ。
そして、その中にはサンプルを保存する為に、液体窒素が充当されているはずだ。
”よし! あれを倒しちゃえ!”
 友康は容器の一つに飛び移り蓋を外した。
そして、不死者の関心を逸らせるために、キッチンタイマーを部屋の反対側に投げつけた。
部屋の反対側で鳴り出す電子音に魅了された、走る不死者たちはそちらに向かっていく。
その間に両足の力を入れタンクを傾け倒そうとした。
 少しずつタンクは傾いていくが、タンクから漏れ出る金属音に気が付いた走る不死者たちは此方に近付いてくる。
「ぐううう、うおおおおお!」
 友康は渾身の力を両足に込めてタンクを押し続けていた。
最初は少しずつ傾くだけだったが、やがて傾きが許容値を越えると、タンクは一気に横倒しになった。
そして、タンクから溢れ出た液体窒素は、室内に広がっていく。
 まず、走る不死者たちの足が床に張り付いた。
そして、足を剥がそうとして、足首からもげてしまい、身体ごと床に倒れ込んでしまった。
そのまま、液体窒素に触れた身体は、みるみる内に凍ってしまった。
 下の床には液体窒素が広がっているのか、冷気で白く曇っていて見えない。
友康は冷気に追い立てられるように、また梁の上に登って観察室に行こうとした。
 観察室に近づいた時に、そのガラス窓に金属の蓋を投げつけて壊し、梁から観察室に飛び移ろうと飛んだ。
「ぬわわわっ!」
 そして観察室に飛び移ろうとして、足を滑らせてしまった。
思わず、まだガラスが残る窓枠に手をかけた友康。
ガラスの破片が友康の手のひらを切り、そこから赤い血が滴り落ちて来る。
 友康は手から急速に力が抜けていくのを感じていた。
友康はまた肝心な所で、ドジをしてしまう自分を呪ってしまった。
”小山さんや東雲さんは助かったかな……まあ、最後に人助けが出来たからいいか”
 ほんの一瞬の出来事なのに、色々な事が頭の中を駆け巡っていた。
 血塗れになっている指が窓枠からするっと外れた。
「ああ、ここまでか……」

そんな友康の両腕をガシッと掴む手が有った。

「え?」
「……何、諦めてんですか?」
 隆二だ。窓から顔を出して友康の左手を握っている。
「ほら……しっかり足を踏ん張れよ……」
 達也は友康のもう片方の右手を握っている。
そして2人がかりでヒョイと友康を観察室に引っ張り上げた。
「……ををを、ありがとー」
 観察室に入れられた友康は、床に座って泣き出してしまった。
隆二はそんな友康の両手に、止血の為に布を巻いてやっている。
 達也は観察室から、下を覗き込み走る不死者が来ないか見張っていた。
「……えぐっえぐっ……もう駄目かと思った……でも、どうして判ったの?」
助かって安心したのか、泣きながら友康が達也に聞いた。
「木村さんが警備室でモニター見てて気が付いて、松畑先生が助けに行く途中で俺が合流したのさ」
達也が親指で隆二を指差し友康に答えていた。
「さっ、早く、ここを出ましょう。 ここは寒くていけない」
 気化した液体窒素が何もかも凍らせている、標本室からは走る不死者の咆哮は聞こえなくなっていた。
観察室の室内温度も急速に低下している。
 隆二は友康に肩を貸してやった、友康の両手は出血で真っ赤だった。
「冨田看護師に手当してもらいましょうか……」
 そんな友康の両手を見ながら隆二が言った。
「ん? 松畑先生が手当してくるんでないの??」
 友康は不思議そうに隆二に尋ねる。
「……ち、血が苦手なんですよ、僕は……」
 隆二は手当で血だらけになった手をぼろ布で拭きながらそう言った。
 うれし泣きでグズグズ泣いている友康に肩を貸しながら、そのまま地下の警備室に3人で向かった。



 

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