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終焉のコドク

自作小説です。 残酷な描写もしますので苦手な方はスルーするのをお勧めします。

第32話 いじわる!

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第32話 いじわる!

 前原達也と前田宏ら3人が黒ずくめの男たちを見張っている頃、片山隊長は研究棟の警備室に残った全員を集めていた。
 全員が地下の警備室に集合したのは、大人が17人(男11人、女6人)に子供が14人だ。
 簡単な自己紹介をしてから今後の予定を話し合っていた。
「それでは女性陣と子供たちは警備室の奥に避難していてください、我々は救援用のヘリコプターを呼び寄せます」
片山隊長が説明している時に、松畑隆二が不意に質問してきた。
「ところで多数の不死者たちが、入り込んでいたはずですが……どうやって、ここまで来たんですか?」
 隆二は自衛隊員たちよりも、栗橋友康が持っている水鉄砲が気になっていた。
「この水鉄砲には漂白剤が入っているんですよ、それを不死者たちにかけると嫌がって逃げていくんです」
 友康は隆二にも不死者が漂白剤を嫌がる様子を語った。
不死者は漂白剤をかけられると、後ろを向いて逃げようとして無防備になる。
そこを斧などで止めを刺すのだ。
「銃を使うと彼らを集めてしまうんで、大概はこのやり方で躱してきました」
 片山隊長がこれまでの駆除のやり方を説明してる。
「……消防や警察の放水車を応用すれば、良い結果を出せそうな話ですね」
 友康の説明を一通り聞いた隆二は、簡単に応用方法を言った。
「「「 あっ! 」」」
 その場に居た救出チーム全員が揃って声を出した。
”……思い付かなかった、もっと楽にここまで来れたのに”
 片山隊長は来る途中にあった放置されていた警察の放水車を思い出していた。
”帰途の時に使わせてもらうか……”と考えた。
 そして、黒ずくめの男たちを監視に同行している達也たちを除く面子で、無事だった階を掃討してゆく事になった。
 安全を確保する為だ。
 ここなら屋上にヘリを付ける事も出来るし、まだ残っているかもしれない生存者の救出拠点に出来るからだ。
「ところで、先生は抗不死者薬を開発者だと聴いてますが、それは今もありますか?」
 片山隊長は隆二に尋ねた。
「はい、およそ20名分有ります」
 隆二は大きさの雑多な注射器をチラリと見て言った。
「薬はそちらに居る木村さんに打って見ました、彼のその後の経過を観察してますが良好なようです」
 隆二は木村を手で紹介しながら、注射した後の経過を簡単に説明した。
「ここにいる全員、注射を打っているんじゃないのですか?」
 片山隊長は、まだ大人しか接種してないのを、疑問に思って隆二に聞いてきた。
「子供たちにはまだ処方しておりません、子供の代謝は早いので、どうなるのか判断が出来ないからです」
 隆二は子供に接種しなかった理由を述べる、子供が万が一不死者化した時に決断出来る人間が居なかったせいもある。
幸いというか研究棟の中には、子供の不死者が居なかったので処分する時が無かったのもあった。
「もっと観察できる被験者が必要です」
 どの位観察すれば良いのか判らないが、隆二は隊員の中から志願者を募って欲しい考えたのだ。
「じゃあ、救出チームに打っておいてくださいませんか?」
 片山隊長はいとも簡単に決断した、助かるチャンスが多いに越した事は無いと考えたのだろう。
「あっ、はい、僕もお願いしようかと思ってたんですよ。 観察出来るサンプルは多い方が有り難いです」
 隆二は片山隊長に頭を下げてお礼を言った。
「あーー、俺たちは動くモルモットになるんすか?」
 隊員の小山が苦笑しながらボヤいた。
「まあ、そうボヤクな、俺たちが噛まれて救出に失敗では言い訳にもならんだろう?」
 片山隊長が皆に告げ、自分が最初に注射すると言い出した。
「それでは皆さんに抗不死者ワクチンを接種して貰います」
 隆二に促されて看護師の冨田は抗不死者ワクチンを、救出チームの面々に接種していった。
「すでに不死者になったものには効果はありません、不死者たちは従来通り処分なさってください」
 冨田は注射をしながら全員に注意を促した。
こう説明しないと抗不死者薬が、万能薬であると誤解されるのを防ぐためだ。
 片山隊長は注射が苦手なのか、しかめっ面でソッポを向きながら注射をされていた。
「このワクチンは不死者ウィルスに対抗するものです、噛まれても不死化にはなりません。それは彼が確かめてくれました」
 隆二は木村を指差した、木村は全員に向かってペコリと頭を下げている。
「今の所、身体におかしい所は無いですから大丈夫ですよ」
と、不死者に噛まれた腕を見せながら皆に告げた。
 だが、友康は注射器を見て青い顔をしている、どうやら注射は苦手らしい。

「さて、次はこのビル内の不死者をやっつけるとするか、3人づつ分かれて各階を掃討していく事にする」
 自衛隊員たちを集めて班を作る打ち合わせを始める。
「まず3階は佐藤・三池・児島の3人」
「2階は出川・田中・大里の3人」
「1階は小山と東雲それと栗林さん? お願いします」
 それぞれの担当が手を挙げて頷き、自分の持っている装備の点検に入った。
「私と大井はここに残って本部と連絡を取る事にする」
片山隊長は何か質問は有るかと言いたげにチームを見回す。
「あいあい」
 友康は軽く返事をして、水鉄砲に漂白剤と水を詰め込んでから、ポンプを動かして空気を入れ始めた。
 その様子を子供たちが友康を取り囲んでジッと見ている。
これまで他の大人たちはおもちゃを積極的に与えてくれた、きっとこの”むっさいおっさん”も見つめていればくれると考えている目だ。
「……こ、これは大事な物だからあげられないよ」
 余りにも熱心に見つめられているので、思わず口にしてしまった。
友康は人に見つめられるのに慣れていない、正統派の引きこもりニートだから当然だ。
「「「……いじわる!」」」
 子供たちが声を揃えて叫んだ。

「ブツブツ……別に意地悪しているんじゃ無いのに……ブツブツ」
ブツブツ言ってる友康を小山が慰めながら、1階の不死者を掃討しに出掛けて行った。
 2階・3階のチームも一緒に出かけて行った。
 子供たちは散々騒いだ後に、鈴木温子らと共に奥に引き連れられて行った。
「疑問なのは不死者たちの行動パターンです」
 それを見送りながら隆二は話を始めた。
「この事案が発生した時には、彼らの動作は遅かったんですよ、しかし、人類が反撃を開始を始めると、動作速度を上げる事で対抗して来た」
 隆二は誰に聞かせるともなく話をしている。
「つまり、不死者たちは進化していると言ってるんですか?」
 片山隊長が素直な感想を述べる。
「ええ、ひょっとしたら彼らは何らかの方法で、お互いに意志の疎通を行っているのでは無いかと推測しています」
 隆二は、その可能性があると考えている、会話をしている訳でも無いのに、一緒に行動を取る事が多いのを疑問に思っていたのだ。
「テレパシーみたいなもんですか?」
 大井隊員が背負っていた無線機を降ろしながら尋ねてきた。
「……ええ」
 隆二が考え事を始めた様だ、テレパシーみたいな物に惹かれたのだろう。
「ウィルスは特定しましたが、その実態は何も解っていないのです」
 柴田がウィルス特定の時の内容を説明したが、それ以上の解明はここでは無理だと話した。
第一に圧倒的に人手が足りないのだ。
「何故、発生してどうのように増殖して居るのかも不明です」
 隆二が柴田の説明の続きをに話す。
「このワクチンは彼らの出すフェロモンを、身体の中で作り出せるようにしている事で増殖を止めています」
 次に彼らに接種したワクチンの説明に入った、本当は全員に説明したかったが、いないのだからしょうがない。
「つまり感染済みの個体だと、ウィルスは勘違いしているんですよ」
 柴田がワクチンの効果を説明した。
「何故、漂白剤を嫌がるでしょうか?」
 片山隊長が隆二に尋ねた。
「漂白剤にはDNA塩基を破壊する作用が有ります、彼らはそれを嫌がっているのだと考えられますね」
 さすがの隆二も友康が推測した以上の事は判らなかった。
「そう言えば外国人の犯罪者は、犯行現場に漂白剤を撒いて逃走する奴が多いと聴きますね」
 元警官の木村がそんな事例を思い出した。
「現場の遺留証拠を破壊する目的ですね」
 隆二が思い出したように説明した。
「日本だとあまり聴かれませんが、外国では結構ポピュラーな証拠隠滅方法です」
 木村は警官時代に鑑識班が舌打ちしながら捜査に手こずった事を思い出していた。
「それにしても、先生はなんでも良く知っていらっしゃる」
 木村が監視モニターから目を離さずに言った。
「ええ、アメリカの学会に出た時に聞かされました」
 隆二が手元のメモ帳を見ながら返事をした。
 片山隊長は大井に無線機で本部と連絡を取るように指示を出して、自分は携帯無線機で各班と連絡をしていた。
 そんな話をしている時、木村が眉間にシワを寄せ始めた。
「ンーッ……??」
 やがて、見ていたモニターを指差して片山隊長に告げた。
「ああ……片山隊長……不味いですよ? 走るヤツには漂白剤が効かない個体が居るみたいですよ」

「「「ええ!?」」」

 その場に居た全員がモニターに注目すると、這々の体で逃げ回っている友康と小山と東雲の3人が写っていた。

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