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終焉のコドク

自作小説です。 残酷な描写もしますので苦手な方はスルーするのをお勧めします。

第27話 ダウン! ダウン!!

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第27話 ダウン! ダウン!!

 府前基地の通信所。
ほとんどの通信を傍受出来る設備がここにはある、元々甚大災害発生時には中核となるべく設備が整えられていた場所だ。
 そして、ここに備えらていた警察無線の通信が入ってきた。
『……ザッ……こちらは疾病センターです、この無線を聞いた方 応答どうぞ?』
若い女性の声だ、おっかなびっくり喋っている。
……
『こちらは朝霧基地。疾病センター。感度は良好。 送れ』
『こちらは疾病センター。当方には13名の生存者がいます、救助を望みます。 えっと、送れ』
『こちらは朝霧基地。疾病センター。救助チームを送る、暫くセンターに留まれたし。 送れ』
『こちらは疾病センター。ヘリコプターで移送はダメなんですか? 送れ』
『こちらは朝霧基地。疾病センター。パイロットが不在。ヘリコプターでの輸送は無理。地上部隊を派遣する。 送れ』
『こちらは疾病センター。じゃあ、陸上を移動ですか? あの不死者たちの間を抜けてですか?? 女・子供が多数います、無理です。 送れ』
『こちらは朝霧基地。疾病センター。ええっと…ウェイト……』
……
『こちらは朝霧基地。朝霧基地よりオールステーション。 ヘリコプター派遣可能な基地はあるか? 送れ』
「こちら府前基地。朝霧基地。こちらは輸送ヘリコプターを派遣できる。 送れ」
『こちら朝霧基地。府前基地はヘリコプター派遣の準備を整えられたし、疾病センターは詳しい住所や着陸位置を指示されたし。 送れ』
「こちら府前基地。朝霧基地。了解 終了」
『こちらは疾病センター。こちらには対不死者用の薬を開発した人物がいます。その効果は確かめてあります、確実に収容してください。 送れ』

……
………
…………!
日本中の無線が一斉に喚き始めた。


 ここは府前基地にある隊員食堂。
前原達也は遅い朝食を取っていた所、府前基地の基地司令が入って来た。
食堂に居た隊員たちは一斉に立ちあがろうとしたが、指令は手で制して話を始めた。
「そのまま聞いてくれ、疲れているのは判るが……疾病センターに居る最重要人物をピックアップする作戦がある。 志願する者は挙手するように!」
 その時、食堂に居た達也も含めた全員が手を挙げた。
 彼らの矜持は少しも落ちていない、必要とされる場所に自ら進んで行くのが自衛隊のモットーだ。
士気の高い彼らを見て指令は満足げに頷いて見せた。
そして、一番手前に居た陸自の片山隊長に、救出チーム編成の指示を出した。
「不死者との不正規戦が予測される。片山隊長は経験者を中心に人選をお願いします、人選が終わったら司令室までお願いします」
 司令は陸上自衛隊の片山隊長に命じて、自分の部屋に戻って行った。
航空と陸上では、本来なら命令系統が違うのだが、今は非常事態の為、府前基地司令の指揮下に入っているのだ。
 片山隊長は達也を含めた9名を選んだ。
そこには達也と共に闘った前田の姿もある、経験者が多い方が何かとやりやすいだろうと推薦したのだ。
 輸送ヘリコプターはUH-1J多用途ヘリコプターだ、機体外側に銃架を付け機銃手が2名付けられる。
搭乗員2名と機銃手2名の他に9名乗れる。
 達也たちは疾病センターに残り機材の回収などの作業を行い、トラックなどを確保して陸路帰投する予定だ。
 ヘリコプターには救助者が載り、そのまま安全に帰投させる。
子供が多いとの事なので、恐らく全員を乗せて輸送が可能であろう。
 達也たちは装備を背負い89式小銃を抱えてヘリの駐機場に急ぐ。
”……ひぃぃぃぃーん”
ジェットエンジン特有の甲高い音が響き始め、やがてメインローターが回りだした。
土ぼこりが巻き上がる中、達也たち救出チームがヘリコプターに乗り込んでいった。
 ヘリコプターなら15分もあれば現地に到着出来る。
 さほど手間を取らずに往復出来るだろう、疾病センターに飛んで重要人物を確保して、基地に戻って来るだけだ。
 そう、最初は誰もがそう考えていた。
ヘリコプターは基地を飛び立ち、一路疾病センターへと飛行を始めた。
しかし、飛行を始めてしばらくたってから、前方の空に何かが蠢いているのをパイロットは見つけた。
 良く見ると鳥の群れが黒く渦巻くように飛んでいる。
「参ったな……」
ヘリコプターのパイロットはため息を付いた。
 鳥をエンジンの吸気口に吸い込むと、エンジン故障の原因になってしまう。
迂回しようにも、かなり大回りせねばならず、貴重な燃料を使ってしまうのはよろしくない。
 何しろ貧乏性は自衛隊の規範とすらなっているとの噂が流れている。
それに救助を心待ちにしている、救助者たちの元に一刻も早く行ってやりたい。
 そこでヘリコプターは群れの下を通過する事して、高度を下げてビルの谷間を抜けようとした。
ところが、ビルの谷間を飛んでいると妙な音がしはじめた。
”ゴン!””バンッ!”
鈍い音が響くたびにヘリコプターが揺れ、機外の空を黒い影が落ちてゆく。
”な、なんだ?”
ヘリコプターに乗る者は全員、思わず天井を見て、お互いに顔を見合わせた。
 そこで、達也はドアから外に身を乗り出して確かめてみようとした。
その目に映ったのは、今まさにヘリコプターのローターに飛び込もうとしている不死者だったのだ。
”バキッ!”
その不死者は鈍い音と共に砕けて地上に落下していった。
 だが、高層ビルの屋上から続々と不死者たちが、ヘリコプターを目掛けて飛び込んできているのだ。
「う、上から不死者が襲撃! 走るヤツだ!」
ヘリコプターに取りつこうとしている不死者たちが、ヘリコプターの回転翼に次々に粉砕されていく。
しかし、彼らはなんら怯む事無く、次々とビルの屋上からヘリコプターに向かって飛び込んできている。
”ピーッ! ピーッ! ピーッ!”
 失速を警告する警報音が、機内に響き渡り始めるのと同時に高度が下がり始めた。
相次ぐ衝撃でローターに付いているブレードが歪み始めているのだろう。
 機は右に左にと激しく揺れている。
 その時、1体の不死者がヘリコプターのテールローター(ヘリコプターの後ろに付いてる羽)に飛び込んだ。
”ゴギャッ!”と、短い粉砕音がしたと思ったら、不死者はテールローターの部品と共にバラバラになって弾け飛んでいった。
 テールローターによる制動を失ったヘリコプターは、操縦の自由を奪われて激しく回転しはじめる。
「ちくしょう!」
パイロットはサイクリックスティックやラダーペダルを必死に操作している。
 そして無理な機動で酷使されいるエンジンは、オーバーヒートして黒煙を吐き始めた。
”ピーッピーッピーッ!”
警報音は連続音になり、制御卓のランプは全て赤色に点滅し始めていた。
 しかし、機の動静は安定しないどころか、益々動揺が激しくなっていく。
「ダウン! ダウン!! 墜落するぞ! 何かに掴まれーっ!」
グルグルと回転する風景を背にして、パイロットは悲鳴にも似た絶叫を挙げた。
「うわぁぁぁぁぁ!」
 回転して遠心力が付いたせいで、ドアに居た機銃手の1人が機外に弾き飛ばされて行く。
誰かが手を伸ばしたが、間に合わなかった。
 達也は自分のシートベルトに捕まり、機外に飛ばされないように歯を食いしばって耐えている。
 地上がぐるぐる回転しながら迫って来る、周りの景色は流れるように変わっていく。
 ヘリコプターは地上にある公園に向かい始めた。
 そして、黒い煙の尾を引きながら、公園の中央にある池へとヘリコプターは墜落していった。
「対ショック防御! もうすぐ水面!」
 パイロットが叫んで間もなく、”ドォーン!”っと、激しく水しぶきを上げながら、ヘリコプターは池の中に落下した。
最初は浮いていたが、やがて、そのまま緩く回転しながら沈み始めた。
 墜落のショックで頭がクラクラする達也は、朦朧としながらも自身のシートベルトをナイフで切り裂いた。
 そして操縦席の方を見ると、パイロットの頭は無くなっていた。
その横の副操縦士は頭の半分が無い、どう見ても死んでいる。
 正面の窓が無くなっており、それが凶器となったのだろう。
 達也は救出チームの残りを助け起こしてやり、ドアから自分達の荷物を機外に押し出した。
”池の畔まで5メートル弱くらいか……”
 達也はそう考えて、おもむろに機に備え付けられていた小物をしまうケースの中身を全て取り出した。
 それを浮き輪代わりにして、その上にかさばる荷物を載せるためだ。
小銃と弾薬は兎に角重いのだ。
だが、自分たちの命綱なので、置いていく訳にはいかない。
 片山隊長が前田たちのシートベルトを外してやり、機の外に出るように促している。
「さあ、泳ごう。グズグズしているとヘリコプターと一緒に沈んでしまうぞ」
隊長に従って、達也たちは池の畔を泳いで目指す、装備も服も着たままなのでとても重い。
 振り返って見ると、ヘリコプターは完全に水没していたが、機影が見えるという事は水深が5メートルくらいかも知れない。
しかし池の周りには、騒ぎを聞きつけた不死者たちが、続々と集結し始めていた。
「不味いな……」
 片山隊長は歯噛みした、ここの公園は開けているので容易に囲まれてしまう。
 何か無いかと周りを見回すと、池の畔にボートハウスがあるのが見えた。
手漕ぎボートも何艘か浮かんでいる。
「あの、ボートハウスを目指せ!」
 泳ぎの向きを変えてボートハウスを目指して泳いで行った。

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