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終焉のコドク

自作小説です。 残酷な描写もしますので苦手な方はスルーするのをお勧めします。

第45話 地獄の讃美歌

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第45話 地獄の讃美歌

 疾病センターの入り口から見える闇は深くなっていく。

 その中をズリッズルッと足を引きずる音を立てながら、ジリジリと不死者の包囲網が被さってきているのだった。
「……お客さんの到着っと」
 そんな様子を観察しながら、佐藤隊員は片山隊長に報告を行い、自分の持つ小銃の残弾数を確認した。
『総員……歓迎の用意が整い次第に応対しろ 丁寧なおもてなしを心がけるように 以上』
 片山隊長から状況開始の合図が出た。
 疾病センター入り口から見える駐車場には数百体の不死者がうごめきながら近づいてくる。
 木村がミニガンを構える。恐らく逃げる時では無く、ここで荒ごなしで人数を削ろうと言うのだろう。
 木村は腰打めで不死者たちを掃討しはじめた。
”ブォォォオオオン”
 ミニガンから赤い光がほとばしる。
そして赤い光が届く先に居た不死者は頭を吹き飛ばされながら倒れていく。
しかし、ミニガンはすぐに沈黙した弾切れだ。
 木村は次に簡易クレイモア地雷を起動させホール内に逃げ込んだ。
 起動させたと言っても紐で手りゅう弾の安全ピンを外しただけだ。
後は不死者が勝手に簡易クレイモア地雷を蹴飛ばして、内臓手りゅう弾の安全レバーを外すの待つだけだ。
”ボンッ”
 何体かの不死者が吹き上がっていく、木村の仕掛けた簡易クレイモア地雷にかかっているらしい。
”ボンッ””ボンッ”
 次々と地雷が爆発していくが隙間は瞬く間に埋まり、ゴソゴソと蠢く不死者の群れになってしまう。
”ドンッドンッ”
 減音器を使っていないのでデカイ音がするが、少しでも威力ある銃弾を送り込みたいので仕方が無い。
 佐藤隊員が小銃で疑わしい不死者を狙撃してゆく、何人かの走る不死者を撃ち倒したが、中にはそれを弾いた奴も居た。
「キシャァァァァッ!」
 強化不死者だ。
 佐藤隊員が東雲隊員からレクチャーを受けた通りに片足を続けて狙撃する。
足もその骨は強化されているので破壊は出来ないが、足を繋いでいる関節は強化されていないらしい。
銃撃の衝撃で関節を破壊すれば動きが鈍ると、前原達也隊員が言っていたので片足を攻撃しているのだ。
 そして、動けなくなった所をテルミット反応爆弾で始末する。
 三池隊員がテルミット反応爆弾をスリングショットで、動けなくなった強化不死者に向けて放った。
”ボンッ! シュオォォォォン” 
 テルミット反応弾をぶつけられた強化不死者は燃焼音を響かせながら燃えだした。
強化不死者は何歩か歩こうと足掻いていたが、やがてガックリと膝を落として動かなくなった。
 また、鈍い爆発音が響いた、何人かの不死者が吹き飛んでいく、しかし直ぐに埋まってしまう。
次々と彼らは沸いてくるが簡易クレイモア地雷がそろそろ無くなりそうだ。
「アルファ。 こちらブラボー。 現在、交戦中……くそっ! 切りが無い、次々と不死者たちは湧いてくる」
 佐藤隊員が状況を片山隊長に報告した、何とか持ちこたえてはいるが如何せん数が多い。
 じりじりと押されている、今の内に撤退の準備を具申しようと外の様子を見ながら報告していた。
 すると、ひとりの強化不死者が全身を振るわせ始めるのが見えた。
「?」
 初めて見る強化不死者と思われる、その挙動に戸惑ってしまった。
 やがて、ニタリと笑うかのように崩れかかっている口を開きだした。
口腔内に空気が吸い込まれていく様子が見て取れる、その様は地獄の讃美歌を詠おうとするかのようだ。
「 ! 」
 その様子を佐藤隊員が見て、本能的に逃げる事に決めた。
「あれはきっとヤバイ! 奥へ走れ!!」
 小山隊員がそう叫んで奥へと走り出した。
他の3人もそれに習って一斉に走り出した。
確認している暇は無い、誰かがヤバイと言ったら従うのが賢明な事なのは経験上よくある事だ。
”キ、キキキ、キュィーーンッ パゥンンッ!”
 強化不死者のニヤケた口から衝撃波の様な物が飛び出した。
”ドォォォン!”
 疾病センターの入り口付近が吹き飛んだ。
「どわわ!」
 入り口ホールの奥へ移動しようとしていた4人は同時に吹き飛ばされた。
 ホール内の不死者移動阻害用に置いてある、椅子やら机やらの山を飛び越えて壁に叩きつけられてしまった。
 威力が大きすぎたのか入り口は崩れて来たガレキで埋め尽くされている。
 全員が埃が舞う中、首や肩を振りながら起き上ろうとしていた。
「な、なんだ! ありゃ!!」
 顔にかかる埃を振り払いながら小山が怒鳴った。
「知るか! また栗橋さんが、なんか怒らせたんじゃないのか!?」
 佐藤隊員が首を振り払い怒鳴り返す。
「あの人は不死者を怒らせる天才らしいからな」
 小山隊員が笑いながら言った。
「「「 違いない 」」」
 4人が笑っているとひょっこり栗橋友康が顔出した、出来上がったテルミット反応爆弾を持ってきたのだ。
「……僕が何か?」
 きょとんとする友康、頭の上にデカイクエスチョンマークが浮かんでいるようだ。
「い、いやあ……何でも無いです」
 佐藤隊員はいきなり出て来た友康に、驚きつつ不審者のようにしどろもどろになってしまった。
「それより連中はまた新しい技を繰り出してきましたよ」
 小山隊員が先程見た強化不死者の様子を友康に伝えた。
「口から衝撃波……ねぇ……訳わかんない進化の仕方をしてますね……」
 友康は三池隊員に出来上がったテルミット反応爆弾を渡しながら考え込んだ。
「アルファ。 こちらブラボー。 不死者の連中が口から衝撃波のような物を出して壁をぶっ壊しやがった」
 佐藤隊員が警備室に報告を入れた。
『こちらは松畑です。 彼らは身体で発生させる超音波を溜めて、一気に放出する事で超音波砲にする方法を思いついたようですね』
 松畑隆二が無線機を通じて連絡してきた。
 警備室のモニターで見ていたらしい。
「今は自分たちが壊したガレキで埋まっているが突破されるのも時間の問題です。 指示お願いします」
 佐藤隊員は今後の指示を片山隊長に仰いだ。
『何か対策を考えます 取り敢えず耳栓をしてもらえますか?』
 隆二が飄々と返事してきた。
”キン!”と固い金属同士を叩きあったような音がする度に入り口ホールの壁が振動している。
外に居る強化不死者がガレキを崩そうとしているらしい。
「くそっ、そんなに長く持たないかも知れんぞ」
 佐藤が壁を見上げながら言った。
「それよりも頭痛が止まらねぇよ」
 強化不死者の超音波は人間の三半規管を著しく刺激するらしく、それに長いこと晒されると頭痛を引き起こすらしいのだ。
 佐藤隊員たちはブツブツ言いながら耳にティッシュペーパーを詰めていた。
「壁は吹き飛ばせるのにガレキは苦手なのか……デコボコしてるから拡散されてしまうのかな?」
 友康は振動しながら埃を落としてくる壁を見ながら呟いた。
 その時、友康は壁についているスピーカーを見て思いついた。
「……あの方法が使えるかも」
 何かを思い付いた友康は廊下を走って警備室に向かった。
 そして、室内に入ると外の騒動を気にしないかのように、パソコンでMRI画像の分析している隆二の元に来た。
 超音波の出力を阻害させる方法を、柴田医師と共に話し合っていたのだ。
「あ、あの、これってインターネットに繋がってるんですよね?」
 友康は隆二が使うノートパソコンを指差しながら尋ねた。
「ああ、米軍の衛星回線を使ってインターネットに接続してるよ。 大きめのISPなら繋がってるはずだ、何を探したいんだい?」
 隆二は分析の邪魔をされたのに、嫌な顔をせずに友康に聞き返した。
 友康が何か思いついたときに困難な状況の逆転が良くあるからだ。
 それは、これまでの実績が物語っている。
「音声をデジタルで録音再生できるソフトを落として欲しいですよ、出来ればモスキートマスターって奴が欲しいですよ」
 ノイズリダクション機能に逆相波と言われるものがある。
外から来る音に同じ逆相波音をぶつけると干渉しあって元の音が消えてしまう現象を利用したものだ。
マイクで拾った強化不死者の出す超音波を、そのまま逆相波に同調させ館内スピーカから流してやるのだ。
 超音波砲は駄目かも知れないが、佐藤たちを苦しめている頭痛から解放してやれるかも知れない。
 友康は隆二に考えている作戦を説明した。
「了解……」
 隆二は滑るようにキーボードをまさぐると、目的のソフトをダウンロードしタブレット端末に転送した。
「そのタブレット端末を使ってくださいね……無線LANでここのサーバーに繋がってますから」
 隆二はそう言うと友康にタブレット端末を渡し、自分はサーバーの音声出力端子を館内放送設備に繋ぎ始めた。
 友康がソフトをダウンロードしたタブレット端末を手に持って入り口ホールの2階にやってきた。
 入り口ホールのガレキはひとりが通れるぐらい隙間が開けられてしまい、そこから不死者たちが続々と入り込んでいた。
 佐藤隊員たちは小銃と斧で対抗している。
 友康はタブレット端末のマイクを強化不死者に向けた。
 そして拾い上げた音をデジタルフィルターで整形して、無線LANを通して警備室に送り超音波の部分を館内スピーカーから出力し始めた。
 効果はてき面だった、先程まで鼻血が出そうな状況だったのが一転した。
 小山たちは何が起こったのか判らなかったが、強化不死者たちが吐き出していた音が消えたのだ。
「 ? よっしゃ 今のうち!」
 強化不死者たちは、相変わらず口を開けて超音波を出しているつもりらしい。
 しかし、何事も無かったかのように自衛隊員たちは強化不死者を屠っていく。
 何しろ強化不死者は超音波を出す時には動けないらしいのだ。
 これはこれで新たな発見だった。
 動けない所をテルミット反応爆弾で屠ってしまうか、無い時には眼孔に銃口を突っ込んで射殺した。
「よし!」
 友康は思わずガッツポーズをした。
「グゥーー ギューー……」
 崩したホ-ルの入り口から奥を伺っていた強化不死者はそんな友康の行動を見逃さなかった。
「ミシャァァァアアアーー!」
 強化不死者の女は怒りに震える様に咆哮しながら肩を震わした。
 やはり友康は不死者を怒らせる天才のようだ。
 そして疾病センターの入り口突破は普通の不死者に任せたのか、彼女たちは暗闇に溶け込むように居なくなった。

 

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