自作小説です。 残酷な描写もしますので苦手な方はスルーするのをお勧めします。
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”ガンッ!”
不死者の頭が金属バットのフルスィングで砕ける。
半分つぶれた頭から脳漿だったモノが赤黒い液体と共に壁に飛び散る。
闇雲に不死者を狩っているのは,リーダー格のトンガリ頭とデブ・ガリの双子の3人組のDQNだ。
「……なんだか、数が多くね? ここ」
無闇に汗を掻いているデブがぼやいた。
”病院だったら入院患者用の食料を蓄えているんじゃね?”とのあやふやな憶測でやって来た3人組だった。
だが、延々と続く不死者との戦いに嫌気がさしているようだ。
「お前が此処が良いと言ったんじゃねぇかよ……」
リーダー格らしいトンガリ頭の男が、デブに言いながら近寄って来た不死者にバットを振るった。
トンガリ頭は元珍走団のリーダーで、デブとガリはその子分らしい。
しかも似てないがデブとガリは双子の兄弟だった。
彼らは事変が始まった時には、アジト替りの地下スナックに立てこもっていたが、食糧がなくなり外に出てきたのだった。
「くそっ! 化け物が多くてたまらん!」
トンガリ頭がバットを振り回しながら、寄り付いてくる不死者の頭を次々に砕いていく。
「2階に行こうぜ、ここだと病院の外からも入り込んで来るからよ」
デブは病棟の待合室の奥にある階段を、持っている鉄パイプで差して言った。
「アイツら階段が苦手みたいだしな」
2階に行こうとした時にガリがロープを引っ張った。
「おら! 早く歩けよ!」
男たちはロープの先に、縄で縛り付けた少女を連れていた。
ここに辿り着く最中に捕まえたのであろう。
少女は激しく抵抗したらしく、あちこち破れた高校の物らしい制服と、青あざだらけの顔をしていた。
3馬鹿がここにやってきたのは、空腹を満たすのはもちろんの事、女子高生を使って違う欲求も満たそうと言うのだろう。
「ああ、早くこの女で楽しもうぜ、ウヘヘヘ」
ぐいっとロープを引っ張り少女を乱暴に引き寄せる。
痛みの為か女子高生は顔を歪めた。
「……うっ……引っ張らないで、縄が食い込んで痛いの……」
その変態っぷりは、女子高生を縛る縄にも現れている。
特殊な性癖を持つ人が好む、胸を強調する縛り方だった。
体格の割に発達した膨らみが強調されるように、胸の所がX字になるように縛られていた。
「すぐに気持ち良くさせてやるぜ」
デブがニヤニヤしながら女子高生の胸を乱暴に揉んだ。
女子高生は身体を捻って手を外そうとしたが、ガリがまたロープを引っ張った。
「しかし、お前の縛り方は変態だな」
トンガリ頭が反対側の胸をバットで小突きながらガリに言った。
「グヘヘヘ、亀甲縛りって言う初歩の縛り方っすよ、俺は股縄縛りの方がいいっす」
ガリが自分の股間をさすりながらにやけた。
「……え?……し、縛られる方なのか?」
トンガリ頭が少し引き気味に答えた。
「……デヘヘヘ」
ガリは下卑た笑いをしながら、少女のロープを乱暴に引っ張って2階へと階段を上がった。
すると、2階の奥から金属の擦れ合う音や、扉を開け閉めする音が聞こえる。
「しっ 奥に誰か居るぞ……」
3馬鹿がそっと歩きながら2階の奥に移動していく。
そして『外科』と書かれた診察室を除くと、看護師の姿をした女性が居るのを発見した。
看護師はトートバッグに棚の中身を詰め込んでいる。
「……見ろよ ナースだぜ、中々良い尻をしてやがる」
その魅惑的な響きに彼らは、女子高生の他にも獲物にありつけたと彼らは狂喜した。
「お、いいねえ 今日は頑張った俺たちに特別ボーナスって感じかあ」
トンガリ頭は薄笑いを上げながら、品定めするように冨田の後ろ姿を眺めた。
「逃げ! うぐっ」
少女はナース姿の女性を逃がそうと声を出そうとしたが、ガリの手で口を塞がれてしまった。
トンガリ頭は肩に金属バットを載せながら外科の診察室に入って行った。
「お姉さん、そんな事してないで俺たちと良い事しようよー」
トンガリ頭の声に反応して、面倒くさそうに振り向いた看護師は冨田奈菜緒だった。
そしてトンガリ頭の間抜けな顔を見てため息をついた。
「今、忙しいから自分の右手に良い事して貰いなさい」
とんがり頭の頭の悪そうな口説き文句を一蹴した。
そして薬品を回収する作業に戻ろうとした。
「そう言わないでさあー」
トンガリ頭は冨田の後ろから忍び寄っているデブに合図を送る。
合図を見たデブが冨田を羽交い締めにした。
そこをとんがり頭が更に抑えつけようと襲って来た。
冨田は躊躇する事なく、トンガリ頭に金的をお見舞いしてやる。
「あぐっ! ぐふぅ ぐふぅ」
イキナリの強打に股間を押さえて、顔を真っ赤にして部屋の中をのた打つトンガリ頭。
冨田は蹴った足をそのまま振り下ろし、自分を羽交い締めするデブの股間を、後ろ蹴りで直撃させる。
「ふぐっ! げうっ げうっ」
デブが股間を押さえて、悶絶の表情で部屋を飛び跳ねている。
自由の身になった冨田は傍らに置いていた斧を構えた。
診察室の入り口から、その様を見ていたガリが女子高生を引き出し、ポケットからカッターを取り出した。
「て、テメェェェ! 動くんじゃねぇ!」
ガリが癇に障る高音の声を出し、小さいカッターを女子高生の頬に当てている。
そう自分たちには人質がいる、他の2人は股間を押さえながらガリの側に駆け寄った。
この女より優位に立てると思った、3馬鹿は得意気に冨田を見すえた。
ボロボロの制服にスリ傷だらけの身体で、顔にカッターを当てられて震えている女子高生。
一目で判る女子高生の事情を察した冨田の表情が変わった。
「……あんたたち……その娘に……何・し・た・の?」
きっと母ライオンが怒った様は、こうなるのではないかと思えるほどの、怒りのオーラが冨田から溢れ出てきていた。
胸に構え直した斧を持つ手に力がこもる。
好き勝手ふるまってきたDQNの3馬鹿トリオだが、怒らせると厄介な人間の見分けぐらいは出来る。
『あ、あるぅえぇぇぇ? ひょっとして……俺たちは地雷踏んだ?』
3馬鹿の顔から表情が消え、変わりに額から汗が一筋流れ落ちた。
沈黙が、この場を支配する。
不意にどこからか不死者の咆哮が遠くに聞こえた。
ガリの目が泳いだその瞬間に冨田が動いた。
冨田が下手から振り上げた斧が、ガリの手首を跳ね上げ、小さいカッターが弾け飛んだ。
これで直ぐには女子高生を、傷つける事は出来ない。
”まずコイツを殺る!”
冨田は振り上げ頂点に達した斧を、今度はガリに向かって振り下ろす。
”ガキン”
だが、鈍い金属同士の衝突音と共に、冨田の斧は自動小銃で阻まれてしまった。
止めたのは達也だ。
「……くっ、駄目だ」
騒動を聞きつけた達也達が駆け付けたのだ。
診察室は鍵が掛かるから大丈夫との冨田の進言を受けて、向いの手術室の不死者を始末して回っていたのだ。
手術室に外科の道具が揃っているので、”綺麗”にしておいて欲しいとの冨田の要請だった。
そして、冨田は急ぐあまり診察室に鍵を掛け忘れたのだった。
「邪魔しないで、こんなクズ共! 屠殺してくれる!」
冨田の怒りは収まらない、肩で息をしながら斧を構えてガリを睨みつけている。
冨田は過去に痴漢に合い、何も出来なくて悔しい思いをしていた。
それだけに大勢で、か弱い少女を慰み者にしようとする3馬鹿が許せなかったのだろう。
「貴女は、そういう事をやってはイケナイ人なんです。だから駄目です」
トンガリ頭とデブは他の自衛隊員に銃を突きつけられている。
「それに……汚れ仕事は僕らの役目です」
達也は富田に諭すように言い、斧を下げさせ椅子に座らせた。
コイツらは不死者では無い、心は腐っているが人間なのだ、その意味はとても大きい。
一度殺人を犯すと、その精神的なダメージは、計り知れない物がある。
自分たちは仕事であると割り切れるように、訓練されているが彼女はそうでは無い。
彼らの為ではなく、彼女のために蛮行は諫めなければ成らないのだ。
こんなクズ共の為に、彼女が心を失うリスクを負いたくは無い、達也はそう考えて止めたのだった。
3馬鹿はいきなり現れた、屈強の迷彩服の男たちに囲まれて萎縮してしまいうつ向いている。
きっと自分より強いものには、逆らわない習性が有るのだろう。
”力の弱い者にしか威張れ無いのか……クズどもめ”
達也は3馬鹿を促して病院の玄関まで連れて行った。
本来なら騒乱か何かの罪で拘束して、司法の判断に任せるべきなのだが、生憎とそんな暇をかけてやる気は無い。
達也は3馬鹿に服を脱げと命じて、持っていた武器も取り上げた。
そして病院から出ていけといった。
彼らは抗議したが、聞く耳は持たずに言った。
「次に見かけたら射殺する」
3人は裸のまま罵声を喚き散らしながら走って行った。
「……きっと、奴ら戻ってきますよ」
そんな彼らの様子を見ながら出川が言った。
「そんな根性があるんなら、次は敬意を払って鉛弾を打ち込んでやるよ」
達也は2階に戻ろうと階段を上がりながら答えた。
診療室に戻ると冨田は、落ち着きを取り戻したようだった。
納得はしてないようだが、女の子のケアを優先するべきとの達也の助言に従ってくれたらしく、女の子の傷の手当をしていた。
女子高生は佐藤優子と名乗った、家族はどうなったのか判らないそうだ。
「必要な物は集まりましたか?」
冨田に尋ねた、暴れまわったせいで不死者が、ここに気が付いたらしく、ざわざわとした気配が漂っているのだ。
「はい、後は手術室に寄れば、当面間に合います」
冨田はトートバッグの中を覗きながら言った。
「じゃあ、大里。 警備室に救助者が一人いると伝えて、15分後に帰ると伝えてくれ」
達也は大里隊員に無線連絡を入れるように命じて、全員に手術室に移動するように促した。
「……じゃない」
戒めを解かれ傷の手当を終えた優子が何事か呟いた。
「ん? なにか言った??」
達也は優子に尋ねた。
「私、一人じゃないんです」
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